第7回「このミステリーがすごい!」大賞、優秀賞『毒殺魔の教室』を読みました。
あー、おもしろかった!
好きなシーン
クーさんの話を聞いて、三ツ矢が死んだ理由がわかったところ
男は暗い目をして天井を見た。つらそうに目を閉じた。
そして、長い沈黙の後で、嫌そうに重たい口を開いた。「はっきりとは覚えていないんだ。なにせ三十年前もの出来事だからな。……でも、あんたはミステリ作家だそうだから理屈として、わかってもらえると思うんだけれど……本気で脅すとしたら、もっと効果的な言い回しを使ったという気もするな。お前を酷い目に遭わせてやるぞではなく、お前の大切な友達を酷い目に遭わせてやるぞ……。その方が、きっと効果的だろう? いや――もちろん、本当はそんなことは言ってないと思うよ。うん、記憶の中では言ってない。でも理屈としては、そう言った方が脅しとしてはより効果的だって、そういう気はするんだよ……。実際に言ったかどうかは覚えてないんだけどね……」
『毒殺魔の教室』306ページ
ここ読んでゾワワワーーー!って鳥肌立った。
三ツ矢ぁぁぁぁぁ!!!!って叫びたかった。
なんて残酷な話なんだっ
クラスのみんなからバカだの邪魔だのって言われてた三ツ矢だったけど、友達のことを考えられるイイ奴だったんじゃんか。
三ツ矢はどんな想いで蓬田とのジャンケンに負けたのか、毒を飲んだのか、って考えると胸が締め付けられるよな。
大人になった夏実と再開したところ
この2人って腐れ縁っていうか、宿命的なものを感じるよね。
正直、子供のころの夏実は憎たらしくて「痛い目に遭えばいいのに~!」ってムカムカしてた。
だけど最後の章で、夏実の心の内を知ってからは……なんだかホッとした。
「な~んだ、こいつ悪いヤツじゃないじゃん」
↑私はこういう感情になるのが好きなんですよ。
小説でもマンガでも、最初はヤなやつと思ってたけど、そいつの人間臭いところを見て、ついつい共感しちゃう瞬間が心地いいです。
だから最後には夏実のことも好きになりました。
「三ツ矢と美和」「美和と夏実」、どちらの友情も感動しました。
この作品ってサスペンスなんだけども、実は友情の話なんじゃねーかな、って思ってます。
個人的には、もうちょっと夏実に引っ掻き回してほしかった
大人になった夏実はあんまり見せ場が無かったけどさ、小学生の時点であれだけ頭脳明晰で悪知恵が働く彼女なんだから『逆転裁判』シリーズに出てくる追い詰められた犯人ばりに爆弾投下してほしかった。
というのも、鶴岡先生の出番がなかったのが心残りです。
先生は事件についてどう思っていたのか?ってことが知りたかった。
ついでに熱血教師を演じていたことについても詳しく知りたかったんだよね。
っていうか先生が裏で操っていたぐらいのヤベー展開も待ってたんだけどなぁ。
正直「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品の『臨床真理』よりも本作のほうが安定感があるから、大賞あげちゃってもよかったんじゃない?って思います。
『臨床真理』は設定が最高におもしろかったんだけど、最後のほうが恐ろしくお粗末だったんだよね。