生まれたときから落ちこぼれ


私は昔から勉強が苦手だった。

 

小学校の算数にすらついていけず、両親と一緒に頭に障害のある方向けの学校に説明を受けに行ったこともある。

小学2年生の頃、九九を暗記するテストがあったのだがクラスで私だけが最後まで合格できず、そのまま3年生になった。

 

当然中学校でも落ちこぼれ、同級生たちからはものすごくバカにされた。

 

私は頭が悪いだけでなく非常に怠け者で全く努力をしないのだ。

厳しい父からは毎日のように叱られ、ずっと勉強机に座らされていましたが、それでも「勉強しているフリ」をしてぼーっとしている日々だった。

 

行ける高校がない

中学3年生になり、高校受験に向けて皆動き出す。

 

私も高校へ行くことを志望していた。

これは勉学に興味があるわけでなく、ただ周りに流されていただけなのだ。

私は普段から頭が空っぽで何も考えていません。頭をつ書くことは疲れることなのでそれすらしない怠け者なのである。

 

中学校での全期間の成績と直近のテストの点数を元に担任の先生に「どの高校が合格圏内なのか」を教えてもらう、ということがあった。

 

私の番になり先生の元へと行ったのですが、先生が不機嫌なのだ。

そして開口一番「お前に行ける高校はねぇぞ」と言われてしまったのである。

 

私の頭の悪さが原因なのですが、私も進学するつもりなのでそんなことを言われても困るのだ。

どうにかならないか、と食い下がると「お前が努力すれば四季高校(仮名)なら可能性はあるかもしれない」と言われるのであった。




……四季高校ってあの四季高校?

底辺高校の実態


四季高校とは私の住む地域で最も偏差値の低い高校で、「頭のおかしい奴の行くところ」「名前を書けば受かる」「四季高校の前を自転車で通ると自転車を奪われる」など酷い言われようの学校であった。

 

一度、その高校に進学した先輩(友達のお兄さん)が携帯で撮ったという動画を見せてくれたことがあった。

その動画には四季高校の駐輪場が撮されていて、奥に男がうずくまっているのが見える。

私「これはなんですか?」

先輩「ヤク中がシンナー吸ってるところ



誇らしいな。これが日本の文化か




ってふざけてる場合じゃねぇよ!! シンナーって何事ですか!?

しかもわけがわからないのだが、動画に映っている男は全くの部外者で学校の生徒ではないと言うのである。




部外者が高校の駐輪場でシンナー吸ってるってどういう状況だよ。

この説明で荒れ果てた高校だというのがおわかりいただけると思う。

こんなことがありましたので四季高校は絶対に避けたかったのですが、そこしかないのなら仕方がない。

四季高校を志望校とし、私の高校受験への道は始まったのだった。

いやいや! 行きたくねーよこんなとこ!

 

高校受験に向かって勉強開始!

志望校も決まったし心を入れ替えて受験勉強を開始! とはならないのが私であった。

 

3年生になり部活も引退したので放課後は自由になる。



おっしゃーーーーグラウンド集合じゃーーー!!!

愚か者の私はその時間を受験勉強に当てず、草野球に力を注いでいたのである。

素人集団で野球部を倒す、という目標を立ててガチで練習していた。

そしてそれは受験前日まで野球をやっていたほどである。

これを読んでくれている方、世の中には信じられないほどのバカがいるということがわかってくれただろうか。




あなたの目の前にある文章、信じられないほどのバカが書いてます。

 

バカすぎて併願受験不可


受験高校の最終決定を提出しなければならない。

私は当然「四季高校」と書いたのだが、まだ記入欄があった。

それは私立高校の欄だ。

 

四季高校は公立高校なので、もう一方の私立高校も受けるというのが決まりであった。

 

志望する私立高校を書いた私は先生に用紙を提出して席に着いたのですが、しばらくすると先生から大きな声で名前を呼ばれた。

 

先生の元に行くと「お前舐めてんのか! お前は絶対私立に受からないんだから受験するな! バカのくせにすべり止めのつもりか! 恥知らずが!」とクラスメートの前で怒鳴られた。




えーっと……それってやばくね?

すべり止め受験ができないというのはさすがに不味い、と自分の置かれた厳しい現実を思い知らされたのだ。

 

底辺高校受験者は人間じゃない

願書を出し、3年生の全生徒が体育館に集められ受験当日の集合場所を引率の先生から聞く、というものがあった。

 

先に書いたように四季高校は本当にバカにされており、この高校を受験するなど嘲笑の的、とはならずそれを通り越して「まともな人間ではない」の角印を押されるようなものであった。

Is that バカ?(あれはバカですか?)
Yes,it is.(はい、松浦圭一はバカです)

 

これはさすがの私も恥ずかしかった。

だから必死こいて体を縮めて隠れていました。

 

底辺高校の受験問題は案外難しい

受験当日

実は緊張のせいかあまり当時の記憶がありません。
↓覚えていること

~試験の間の休み~

私「さっきの国語のテストすっげー難しくなかった?」

友達1「楽勝だった」

友達2「俺も」

友達3「俺も」



え? 俺落ちるの?

あとは数学の試験の際、担当の試験官がなんというか、非常に巨乳だったのですがその胸元のボタンが外れており、それが気になって集中できませんでした。

これはほかの受験生も気付いていたようで休憩時間はその話題で持ち切りでした。

 

合格発表当日

この日は合格発表のため学校は休みで私は母屋で祖母の作った昼食を食べていました。

 

当然ですが、この時高校に受かったかどうかで私の頭の中はいっぱいでした。

すべり止め受験ができなかったため「もし四季高校に落ちたら中卒」と恐怖で食事が喉を通りませんでした。

 

それを見た祖母が「ごめんね。おばあちゃんのご飯はまずいよね、残していいからね」と申し訳なさそうに言いました。

全然まずくなどないのですが私のせいで祖母を傷つけてしまいました。

本当にごめんなさい。

 

そして合格発表を見に行った母から電話があり、私の四季高校への進学が決定しました。

 

底辺高校へ潜入

よっしゃ~受かったぜ~。

 

あんなにビビっていた様子はどこへやら、私は調子に乗ります。

 

入学が決まったしまずは制服を作ります!

採寸してもらって数日後受け取った制服は



なぜ平成の世にボンタンがあるのだ?
ボンタンとは昔の不良が穿いていた太いズボンのことである。

そしてなぜか私はそのボンタンを渡されたのだった。



もしかして四季高校に入学するってことはこういうことですか?

俺、マジでヤベーんじゃねぇの?

 

入学式当日

付き添いで来てくれた母と一緒に四季高校の門をくぐる私であったが、ビビりまくりである。

だってマジで四季高校はヤバイのだ。

普通の生徒もヤバイが四季高校というのは不良外国人の巣窟なのである。

ここはもはや日本ではない。

 

体育館に集められ、保護者と新入生が並んでパイプ椅子に座らされる。

悪名高い四季高校だったが意外や意外、壁にペンキで落書きがあるなんてことはない。

かなりボロい木造の体育館だったが想像していたよりも綺麗である。

 

式が始まり、先生が前で説明などをしているのだが、隣に座る私の母が何やら笑っているのだ。

ふざけるな! こんなところで目立って初日から四季高校の生徒に目をつけられるわけにはいかん!

 

私「何してるんだよ、ちゃんと先生の話を聞けよ」

「なんか懐かしくて。こことかここに呼び出されてよく告白されたから」

と、ドヤ顔で何か言っているのである。



ぶん殴ってやろうかと思った。

俺が不良に目をつけられたらどうしてくれるんだ。

実は私の両親は四季高校の出身なのだ。

彼らが四季高校に通っていた時代はこの学校も優秀な生徒が多く、地域で1位2位を争うほどの偏差値の高かった高校だったらしい。

 

で! いきなりなんで母親がこんなこと言い出したかと言うと、

私の母親、かなりの美人なのだ。

私の母伝説 飛び込みでミスコンに出場して優勝をかっさらう

家族でミスコンの大会を見学に行った若い頃の私の母。

受付に知り合いがいたので挨拶に行くと

受付の人「あ! (私の母)ちゃんじゃ~ん! ミスコン人数少ないから出てよ~」

「いいよ~、出てみる~」



ミスコン優勝と副賞の海外旅行をゲットである。

 

教えてといてやる。

こういう人種は無敵なのだ。

 

類まれなる才能を持ち、結果を出しているような人間はたいていのことは気にしない。

私の母にとっては不良の巣窟なぞアウトオブ眼中なのである。

 

実際私の母は格上の相手だろうと隙を見つけたら完全論破し、相手を黙らせる。

はっきり言って敵にすると結構ヤバイ。

 

そんなモテモテの人生を歩んできた私の母が配布された学校周辺の地図を指差し、ニヤニヤしながら私に自慢話を続けるのだ。

「ここによく呼び出されて~、他にもここで告白されて~」



もう黙ってくれ! 私はあなたのような強者ではない!

不良どもに目をつけられたらマジで命がヤバイ!

 

不良だけでなく自分の母親にまで気を使い、ヘトヘトになった私であったが入学式は無事終了した。

 

次は各教室に行って説明を受けるのだが……。

ん? なんで違う校舎に移るんだ?

他の生徒とは違うところへ連れてかれてるんだけど……。

 

は!?

ここが俺の教室!?


次回予告

「あいつ、過去に傷害事件を起こしてるから薬漬けで意識を朦朧とさせて無力化してるんだよ」

底辺高校に入学した私であったが、それだけでは済まず「隔離教室」へと収容されてしまう。
そこで待っていたのは過去にクラスメートを半殺しにした者や後輩を拘束、監禁して楽しむサイコ野郎たち。
俺、マジで死ぬんじゃね?